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【イベントレポ】のむコレ2018『七年の夜』原作者チョン・ユジョンさんミニトークショー

現在、シネマート新宿&シネマート心斎橋にて開催中の劇場発信型映画祭「のむコレ2018」で上映中の、チャン・ドンゴン出演の韓国映画『七年の夜』。この公開を記念し、シネマート新宿にて、11月13日(火) 14:40の回上映後に原作者のチョン・ユジョンさんが登壇され、ミニトークショーが行われた。

【のむコレ2018】公式サイト

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書肆侃侃房 田島さん(以下、田島) 私は書肆侃侃房という出版社の田島と申します。先ほど皆さんがご覧になった『七年の夜』という映画の原作小説を日本語訳で出している出版社です。

本日、『七年の夜』原作者のチョン・ユジョンさんがお見えです。先ほど日本にお着きになったのですが、今までイギリスやドイツに行ってらっしゃったりとお忙しいなか、今回日本にお越しいただきました。小説「七年の夜」は韓国でベストセラーになった作品です。これから映画をご覧になった時の感想など、お話をお伺いしていきたいと思います。ではチョン・ユジョンさん、まず簡単に自己紹介をお願いいたします。


チョン・ユジョンさん(以下、チョン・ユジョン) みなさんこんにちは。私は『七年の夜』の原作者で、韓国で小説を書いておりますチョン・ユジョンと申します。

田島 では早速、映画と小説のことについてお聞きしたいと思います。「七年の夜」の映画化が進行した経緯を教えてください。

チョン・ユジョン 実はこの小説が映画になるのに"七年"という時間がかかりました。そのため、韓国の読者から「もし本のタイトルが「10年の夜」だったら映画化に10年かかったのかな」なんて言われたりもしました(笑)。

田島 7年もかかったんですね。書肆侃侃房のある福岡では『七年の夜』は上映されていないので、先日東京に来た際にこのシネマート新宿で映画を拝見したのですが、私は小説と映画では、ずいぶん違う印象を受けました。

チョン・ユジョン たしかに小説と映画では異なるところがたくさんあります。まずはキャラクターの解釈が異なりますし、お話の展開や結末も異なっています。自分の娘を殺した男の息子を殺そうとする男がいる、ということは同じですね。

主人公の1人はオ・ヨンジェという悪人で、彼は殺された娘の父親なのですが、そのオ・ヨンジェというキャラクターの解釈が監督と私で全く異なっていました。私はオ・ヨンジェという男を"根っからの悪人"と考え、この根っからの悪人がどうやって周りを破壊していくのかを考えました。映画では"悪人になってしまった理由がある"と考え、その理由を物語に与えています。

小説の結末がどうなるかは本を読んでのお楽しみにしていただきたいと思うので、ここでお話しするのは控えますね。ただ、韓国の読者とチュ・チャンミン監督と私で意見が一致した唯一の事実は「オ・ヨンジェを演じた俳優が、韓国で1番かっこいい俳優のチャン・ドンゴンでよかった」というところです(笑)。

(会場笑)

田島 チャン・ドンゴンさん素敵でしたよね。ただ、あの冷酷な演技を皆さんがどこまで受け止められるかが、私は気になりました。

チョン・ユジョン チャン・ドンゴンさんはこのオ・ヨンジェという役を演じるために凄く頑張っていらっしゃいました。例えば髪の毛をそって額を広くしたり、悪人を演じるために様々な工夫をされていました。撮影中に耳を怪我されて、苦労もしながらこの役を演じたと聞いています。





田島 もう1つお聞きたいのですが、舞台となるセリョン湖は架空の場所だとお聞きしたのですが、映画の中に登場する湖はどのように見つけられたのでしょうか?

チョン・ユジョン 小説の中では"セリョン湖"という1つの場所なんですけど、私の知る限りでは、この映画を撮るために韓国のいろんな場所のダムで撮り集めたものを編集して、1つの場所を作り上げたと聞いています。

息子が捕まるシーンで小さな島が出てくるのですが、そのシーンは実際に島があるところで撮影し、大きな塔が出てくるシーンは大きな塔がある場所で撮影、ダムのシーンはまた別のところで撮って、という風に、様々な場所で撮影されたものを組み合わせて作り上げるので、編集作業だけで1年もかかったと聞いています。

田島 物語の結末が小説と映画で異なっていますよね。映画の結末については、どう思いましたか?

チョン・ユジョン 私は、映画の結末はある程度ストーリーに余白を残していると理解しているんですね。息子と父親が会うシーンが出てきますが、ここで2人が会うだけに留めることで、観客が自由に解釈する余地を残しておいたんじゃないかと私は思っています。

この作品を撮ったチュ・チャンミン監督は『王になった男』を撮った方で、韓国の映画監督の中でもストーリーテリングに卓越した映画監督です。この作品で彼は"悪人の本性は何か"ということを描こうとしたんじゃないかと思っています。

結末が異なるのは、私とチュ・チャンミン監督は悪人に対する解釈自体が異なるので表現も変わってくるのかなと思っていて。私はこの映画にすごく満足しているんですね。セリョン湖という舞台をそのまま映画の中で作り出してくださったことだけでも感動しましたし。この作品の完成度の高さは、疑う余地はないと思います。

田島 ではそろそろお時間が迫ってきましたので、最後に皆さんにメッセージをいただけますか?

チョン・ユジョン この映画を見た後、胸に何かが詰まるような気持ちが残るかもしれません。ですが、韓国人の心と親との関係を垣間見ることができる映画かなと思っているんですね。映画は映画自体で楽しんでいただきたいと思いますし、原作にも興味がありましたらぜひ小説も読んでいただけたら、また違う楽しみ方もしていただけるんじゃないかと思います。今日はありがとうございました。

(会場拍手)

<おわり>

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