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時代劇にでてくる屋台。どんな料理を出していた?|中国時代劇トリビア#17

ドラマ「王女未央-BIOU-」の冒頭で、未央と拓跋濬が劇的な出会いを果たす街中の屋台。

「王女未央」場面写真1

高貴な方が身分を隠して屋台のお椀をすする...というのは歴史ドラマでたびたび登場する風景ですが、中国ではいつごろから屋台があって、どんなものを食べていたのでしょうか?

中国四千年の歴史...とは言いますが、今日私たちが知っている"中華料理"、たとえばフカヒレや、今の形式の北京ダックなどは、100~300年の歴史しかないそうです。いかにも屋台フード!を連想させる麺状のもの(又はすいとん)は後漢の中期以降に小麦粉を使用した食品が急速に広まり、そのころから一般の人々もそうした食品を口にするようになったとか。

「如歌」場面写真

「如歌~百年の誓い~」より。

屋台のような外食業は、もとは旅人を相手に商売をする"お休み処"的なもの(ドラマに登場する際は、刺客登場率の高いデンジャラスゾーン!)でしたが、漢代に入って人々の生活水準が高くなり、商業が発達するようになると、都市部での外食業が盛んになり、やがてそれが都市部で働く人や、定住する人たちのための社交場や、楽しみの一つとなって発展していきます。

「月に咲く花の如く」場面写真

「月に咲く花の如く」より

では、実際そうした屋台ではどんなものが売られていたのでしょうか?

張競先生の著書「中華料理の文化史」より一部引用すると、むかしの人たちは調理したものを売らず、市場では食事をすることもなく、干し肉や魚を売る程度の販売だった(『塩鉄論』訳)が、四川省で発見された後漢時代の市場の様子を描いたレリーフをもとに、販売された食べ物をまとめると...

・豚肉を火であぶり、ニラは卵といっしょに調理されたもの。
・犬肉は煮込んでから薄切り、馬肉はあつもの(スープ)にしたもの。
・魚を油で揚げたもの。
・レバーを茹でて片状に切ったもの。
・鶏肉の味噌の旨煮。
・羊の塩漬け。子羊は煮込み。
・家畜の胃袋の干し肉。
・豆を甘く調味したもの。
・ひな鳥、雁のスープ。
・豚の丸焼き。

などなど、様々な手の込んだ料理が作られ、売られていたことが分かったそうです。スープ状のものが多種あるようなので、気になる時代劇の屋台で出るお椀の中身は、具だくさんのスープ...?かもしれないですね!

漢の時代から「王女未央-BIOU-」の魏晋南北朝時代へと時代が移ると、西域から伝わったと言われる小麦粉をこねて焼いた薄くて丸いパン「胡餅」が登場。漢の霊帝はこの「胡餅」が大好物で、洛陽の貴族の間で大流行したとか。

やがてこの食べ物も庶民の間にもひろがっていき、生地を発酵させてもっちりさせたり、中に具を入れて焼いたり...と進化を遂げて、皆に愛されるファーストフードとなっていきます。ドラマ「如歌~百年の誓い~」で売られる大人気おやきは、こんな街の流行を描いたのかもしれないですね!

「如歌」場面写真2

「如歌~百年の誓い~」より。

安史の乱(755年)で玄宗が蜀に逃げた際には、食べ物もなく何も口にしていない玄宗のために、楊貴妃の兄で宰相の楊国忠がみずから、この「胡餅」を買ってきて玄宗にさしあげた、という逸話もあるそうで、「身分を隠して屋台フード」はあながちドラマの中だけでなく、実際にもあった情景だったようです。


Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。『台湾エンタメパラダイス』『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)にて執筆記事掲載中。


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<参考文献>
筑摩書房 著者 張競 「中華料理の文化史」
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