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中国史に残る酷刑の世界|中国時代劇トリビア#19

哀しくて、残酷で、エロティック...そんな今までにないダークなラブ史劇の世界を繰り広げて話題のドラマ「晩媚と影~紅きロマンス~」。パフ・クオ演じる流光を筆頭に、艶っぽい殺し屋たちがみせる殺人技をはじめ、私たちの想像を絶する酷刑がちょこちょこ登場して、怖い!だけど、観たい!! と、不気味さに興味がそそられる作品でもあります。

「晩媚と影」場面写真1「晩媚と影~紅きロマンス~」©Media Caravan Ltd.

今回は、そんなちょっと不気味で怖い、中国史に残る酷刑の世界をご紹介していきます。

古代中国の刑罰は、公的機関による「官刑」と宗教・社会的なものによる「私刑」の二種類に分けられます。斬首(くびきり)、首かせ・足かせ、むち打ちなどは官刑のくくり、女主人の侍女に対するいじめ(宮廷ドラマにもたびたび登場)や、晩媚ら殺し屋による制裁は、後者の「私刑」に当てはまるところでしょう。

「晩媚と影」場面写真2「晩媚と影~紅きロマンス~」©Media Caravan Ltd.

髪さえ落とすのを嫌がる文化からもわかるように、中国では肉体を傷つけることを嫌うため、刑罰にはあえて体にキズを与えて損なう刑が多かったそう。その究極の例が「宮刑」であり、肉体だけでなく、体に損傷をうけたまま、なお、生きながらえなければならないという精神的ダメージも大きい刑と言われています。

ドラマ「晩媚と影~紅きロマンス~」で強烈なイメージを残すのが、物語の序盤で登場する「烹煮(ほうしゃ)」、"かまゆでの刑"ではないでしょうか。日本でも大泥棒・石川五右衛門が処された刑として知られるこの"かまゆでの刑"ですが、日本と中国の違いはというと、なんと、ゆでたあとにそれを遺族や、殺した側が食べてしまうこと!! この刑の歴史は古く、春秋時代より青銅器の釜で人をゆで殺す方法がとられてきたそうです。

「晩媚と影」場面写真3「晩媚と影~紅きロマンス~」©Media Caravan Ltd.

衝撃的なこの刑は印象が強烈なだけに、物語や小説の題材にもなり、明代の小説「封神演技」でも、周の文王が息子の肉で作られたスープを皇帝から与えられる場面が描写され、さながら「晩媚と影~紅きロマンス~」で若様が屈辱を味わうシーンを彷彿とさせます。

「晩媚と影」場面写真4「晩媚と影~紅きロマンス~」©Media Caravan Ltd.

清末に上海で生まれた、日本でいうところのかわら版、手書きの絵入り新聞「点石斎画報」には、読者の好奇心を満たすゴシップ的な情報記事として、人肉スープ事件などが取り上げられることがあり、ショッキング!という点ではもうダントツの刑(私刑)だったと言えそう。

こうした迷信や物語をうみだした中国の酷刑、怖いけど、まだまだ観たい!? 続きはぜひ、ドラマの世界でじっくりお楽しみ下さい...。

参考文献
ミネルヴァ書房 編著者 武田雅哉 加部勇一郎 田村容子 「世界文化シリーズ6 中国文化55のキーワード」
徳間書店 尾鷲卓彦著 「図説 中国酷刑史」

このコラムに登場した作品
「晩媚と影」DVD

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作品HP:https://www.cinemart.co.jp/dc/c/bloodyromance.html

翻訳・編集:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「中国エンタメニュース」を連載中。『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)『見るべき中国時代劇ドラマ』(ぴあ株式会社)『中国ドラマ・時代劇・スターがよくわかる』(コスミック出版)などにも執筆しています。

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