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「明蘭」の原題、「知否知否應是緑肥紅痩」に込められた意味|中国時代劇トリビア#40

「明蘭」結婚式のシーン©Daylight Entertainment CO.,LTD

公私ともにビックカップルのウィリアム・フォンとチャオ・リーイン共演の話題作「明蘭~才媛の春~」。強いきずなで結ばれた夫婦の姿が心にしみるこのドラマに、すっかり夢中になっているファンの方も多いのではないでしょうか。

今回は、この「明蘭~才媛の春~」にまつわるトリビアをご紹介していきます。

原題「知否知否應是緑肥紅痩」の意味

ドラマの原題は「知否知否應是緑肥紅痩」。これを見てまずは「どんな意味?」と思いませんでしたか?

この一節は宋代の女流詩人、李清照の『如夢令(じょぼうれい)』の詞(ツー)を引用したもので、二日酔いで朝寝をした女主人が、侍女に外の海棠(かいどう)の花の様子を尋ねた情景を詠んだものと言われています(侍女が夫と解釈される場合もあり)。

「知否知否應是緑肥紅痩」の部分は、侍女が「花は昨日のままですよ」と答えたのに対して、「本当なの? 緑の葉が増して、紅い花は痩せて(散った)しまったんじゃないかしら」とかえす内容で、人の世情に関わりなく、いつの時も季節は変わりなく移ろう......という、ちょっぴり寂しいニュアンスを含ませた詞として解釈されたりしています。

原作小説の作家、関心則乱はこのタイトル「知否知否應是緑肥紅痩」に3つの意味を持たせており、一つ目は家事に追わることもなく、きままに朝寝ができるこの女主人のように、明蘭も満ち足りた生活を送れるように......という願いを込めたこと、二つ目は宋代の結婚衣装の色が緑と赤であること、そして三つ目に赤い花が散った後に緑葉が茂るように、側室の子(緑)の明蘭が正室の子(赤)よりも、風雨に耐えて成長する力があるということ、などを含ませているそうです。

「明蘭」場面写真©Daylight Entertainment CO.,LTD

李清照とは、どんな人だったのか?

では、この詞の作者である李清照についても少しご紹介を。

李清照は北宋末期に山東省で生まれました。幼い頃から詞の名手として優れていただけでなく、夫である金石学者の趙明石の研究を助け、共に収集した書画骨董の目録を作成するなどして、その才を発揮していきます。"女李白"と言われるほどの酒豪でもあり、「知否~」のように詠む詞にも二日酔いがたびたび登場するという愛嬌のある一面も。

しかし晩年は不幸が続き、北宋の滅亡(1126年)などの戦乱に巻き込まれ、彼女の才能を誰よりも愛してくれた夫も病で亡くしてしまいます。一人残された李清照は、夫の残した大切な研究書や骨董品を守るために、江南各地を転々としますが、強盗や略奪にあって、大事な品々を失うはめに......。

そんな折、南宋の官僚・張汝舟(ちょうじょしゅう)からの求婚を受けて再婚をするものの、実は汝舟が自分の持っている骨董品目当てで近づいてきたことに気がつくと、彼の公金横領を告発、みごと離婚の権利を勝ち取ります。この時、李清照は49歳、汝舟との結婚生活はたったの100日足らずで、その後は一人で趙明石の研究目録を整理し、詞の作成に励む生活を送ったそうです。

夫思いで賢く、そして芯の強い李清照は、明蘭のイメージに重なるようにも思えますね。

「明蘭」チャオ・リーイン©Daylight Entertainment CO.,LTD

【参考文献】
井波律子著『奇人と異才の中国史』岩波新書

翻訳・編集:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「中国エンタメニュース」を連載中。『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)『見るべき中国時代劇ドラマ』(ぴあ株式会社)『中国ドラマ・時代劇・スターがよくわかる』(コスミック出版)などにも執筆しています。

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