Cinem@rt エスピーオーが運営するアジアカルチャーメディア

人参の力と名前の由来、そして、神医でも治せない条件とは?|中国時代劇トリビア #115

剣術の達人であり天下屈指の医術を持つ美しき孤高の神医・白岳(扮リー・ホンイー)と、千年の修行を経てようやく人の姿になった(高麗)人参の仙人・葉兮(扮ホアン・リーイン)が繰り広げるラブロマンス時代劇「純真ロマンス~最強の花嫁~」

今回はこのドラマに登場する気になる不思議なパワーについて、探っていきたいと思います!

命を救う?! 人参の不思議なパワーとは?

「純真ロマンス~最強の花嫁~」では、楓華谷の若き谷主であり神医の白岳は、剣術と医術を誇っていますが、長年自ら薬を試してきたせいで体が弱り、人参の力で命を保っています。

リー・ホンイー
「純真ロマンス~最強の花嫁~」© 2022 China Huace Global Media Co., Ltd.

現代でも漢方として使われる人参は、どんな効き目をもっているのでしょうか?

人参は、気虚(エネルギーが少なくなり、元気がない、気力不足、免疫力の低下など)を補う捕気薬として使用されており、大いに活力を補うことができる力があるそう。“人参”の名称は、根の形が人間の形に似ていることから名付けられており、人参の仙人・葉兮が人型をとれたのも、自然と言えば自然だったのかもしれません。

長期にわたっての服用も可能で、着実で確かな治療効果が望めることから、古くは漢代から医家が常用しており、五臓(肝・心・脾・肺・腎)を補い、精神を落ち着かせることにも使用されました。劇中でもちらりと語られますが、最良の人参は野山参(野生で15年以上育った人参のこと)で、実際に長期にわたって乱掘されたため、今も絶滅の危機に瀕しているのだとか。

服用方法は色々あるようですが、ふだん気を補うのに使うなら、あまりたくさんは服用せず、毎日数片だけお茶にしたり、他の滋養品と共に煮込んで飲めば、かなり良い効果が得られるとか。たしかに、劇中でも煮だしたお茶のようなものを、白岳が口にしていたような⁉ 葉兮が強力な生命力を持ち、何度も再生するのも、人参の持つパワーの現れなのかもしれませんね。
(漢方は、用法用量を守って正しくお使い下さいね!)

ホアン・リーイン
「純真ロマンス~最強の花嫁~」© 2022 China Huace Global Media Co., Ltd.


神の植物・霊芝の正体は⁉

人参のような実用的な薬材と同様、時代劇では、不老不死の力を持った薬も登場してきます。

そうした神秘的な力を持った不思議な「仙薬」として、登場するのが霊芝。ファンタジードラマなどで、死に瀕した人を救う最強薬材として、険しく危険な山の中に命懸けで探しに向かう……というシチュエーションで登場したりする、あの霊芝です。

中国最古の薬物書「神農本草書」にも“芝を食べれば延年不死”と記されているそうで、漢魏六朝時代にはおおいにこれが流行したとか。実は霊芝の“芝”は、奇怪なかたちをしたものの総称で、石芝・木芝・草芝・肉芝・菌芝の五芝に分けられており、霊芝はその中の菌芝の一種。かつては変わった形の自然物を、縁起の良いものとして捉えたことから、大変貴重な扱いをされたそうです。

神話伝説によると、霊芝には起死回生の効果があるとされ、民間伝説の「白蛇伝」の中で、ヒロインの白娘子が気を失った書生を救うために、命がけで仙薬を盗むというその仙薬が、まさに霊芝でありました。こうしたお話しのひろがりによって、民間での“霊芝崇拝”が深まり、霊芝が神秘的なものとされますが、唐代に入るとそうした流行は収束していったそうです。

リー・ホンイー2
「純真ロマンス~最強の花嫁~」© 2022 China Huace Global Media Co., Ltd.


神医でも治せないのは……

白岳のように、神医と称される医者が時代劇には登場しますが、中医学では「望診(顔の表情、顔や皮膚の色つや、動作、舌などを見て判断する診察法)で病気を知る者を神と呼ぶ」と言うそう。

このトリビアでもたびたびとりあげている伝説の神医・扁鵲は、脈診と望診で病気の診断をするのが得意でした。扁鵲は、良医に早期発見・早期治療させれば、多くの病が治るという現代にも通づる考えの持ち主でもありました。そんな扁鵲でも、病を最も治し難いとした患者の条件があったそうで……

① 放漫で理屈の通らない人
② 身体を大切にせず、お金を重要視し過ぎる人
③ 季節に合わせて飲食や衣服の調整ができない人
④ 陰陽のバランスが取れず、内臓の気が乱れている人
⑤ 極端に痩せて体力がなく、薬が飲めない人
⑥ 祈祷を信じて医学を信じない人

といったタイプの人たちは、たとえ神医であっても、どうすることもできない相手となったようです。現代人の私たちにも当てはまるような、ちょっとドキっとするこの項目。心に留めておいても良いかもしれませんね。

リー・ホンイー3
「純真ロマンス~最強の花嫁~」© 2022 China Huace Global Media Co., Ltd.


【参考文献】
著者:張志斌 鄭金生 訳者:古屋順子 『図説中医学入門 伝統の養生健康法』 科学出版社
著者:李経緯ほか 訳者:及川佳織 『図説中医学入門 歴代王朝の宮廷医療』 科学出版社



人参が登場する中国ドラマはこの作品
「純真ロマンス~最強の花嫁~」
「純真ロマンス」キービジュアル

2023年12月8日(金)DVD-BOX1 リリース
2023年12月22日(金)DVD-BOX2 リリース 各12,100円(税込)
※12月6日(水)より、DVDレンタル&動画配信スタート!

原題:武林有侠気
発売・販売元:エスピーオー
© 2022 China Huace Global Media Co., Ltd.
https://www.cinemart.co.jp/dc/c/junshin.html

連載「中国時代劇トリビア」記事一覧

この連載では、中国時代劇を見て感じるちょっとした不思議や疑問を解説します。

Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「中国エンタメニュース」を連載中。『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)『見るべき中国時代劇ドラマ』(ぴあ株式会社)『中国ドラマ・時代劇・スターがよくわかる』(コスミック出版)などにも執筆しています。

記事の更新情報を
Twitter、Facebookでお届け!

TOP