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古代中国にカイロってあったの?|中国時代劇トリビア #117

「晩媚と影〜紅きロマンス〜」のリー・イートン(李一桐)&「霓裳(げいしょう)~七色に輝く虹の如く~」のビー・ウェンジュン(畢雯珺)のキュートなカップルが話題のミステリーラブ時代劇の「想いの温度差~九霄寒夜暖~」。

寒がりヒロインと体温高め王子の最強コンビがとてもチャーミングに描かれるこの物語の中から、今回は色々と探っていきたいと思います!

「想いの温度差」場面写真1
「想いの温度差~九霄寒夜暖~」©BEIJING IQIYI SCIENCE & TECHNOLOGY CO., LTD.




古代中国にカイロってあったの?

「想いの温度差」場面写真2
「想いの温度差~九霄寒夜暖~」©BEIJING IQIYI SCIENCE & TECHNOLOGY CO., LTD.

正義感は強いけれど、不思議な病のせいで、いつも寒さに怯える捜査官・蘇玖児。ある事件で出会った王子・寒猙に触れると症状が落ち着くことに気が付いた蘇玖児は、事あるごとにカイロ代わりに寒猙に触れようとするのですが……、さて、古代中国にカイロってあったのでしょうか?

昔から暖をとる道具として、宮廷内そして民間でも使われたものに、「手炉」がありました。手に持ったり、袖に籠を入れることができるので「持ち炉」「袖炉」とも呼ばれ、炉の中に炭火があるので「火籠」とも呼ばれます。


手炉の発祥

発祥については諸説あるようで、春秋時代の楚国が発祥という説では、楚の土地は湿気が多かったので、楚人は穴の開いた香炉に香草を入れて燃やし、香気を分散させることから手炉が発明されたのだとか。また、隋の時代に起源があるという説もあり、隋の煬帝が南部の江蘇を訪れた際、寒さが厳しいため、地元の郡奉行が銅鍛冶に木炭を内蔵した小さな銅製の炉を作らせて奉納したとも。


手炉はどんな形?

初期の手炉は簡易な形状で、円形や楕円形のものが主流でしたが、その後、八角形、四角形、腰形(胴の形が袴をはいた姿のように見える)、花かご形、かぼちゃ形、梅形、海棠形、亀形などの形が登場し、ふっくらとして手になじむ形になっていきます。そして放熱部分となる炉蓋には、誕生を祝う五羽の蝶、梅、蘭、竹や菊、梅を囲むカササギなどの文様や素材を用いて、さまざまな幾何学模様を彫刻しました。外側にも趣向が凝らされ、風景や人物、花鳥などの絵を彫刻したり、詩、書も彫刻され、金や銀などを使ったものもあります。特別な職人技により、手炉の絵はより立体的で輝きが増し、手炉は多くの文人にとっての卓上の鑑賞物ともなりました。


手炉の変遷

唐時代中期には、手炉が官吏の家庭用品になっていたと言われています。宋の時代までには、城市内には焚香料などを扱う香薬局があり、お香や手炉用の木炭を販売していました。北宋時代には、手炉が庶民の家庭に入り、一般的な暖房器具になりました。この頃の手炉の素材は青銅製が多く、銀、鉄、磁器も使われ、炭やかまどの灰を余熱で焚いて使用していました。

明と清の時代になると手炉は銅素材のものへと変わっていきます。銅は熱伝導率が良いため、手に持つと温かく感じられること、さらに銅は繊細かつ滑らかで、色が透き通っていて、柔らかくて強度もあり、錆びたり割れたりもしにくいため、手炉に適したそうです。手炉の中で最も高級なものが生まれたのは、明代と清代初期から中期の品で、特に有名な芸術家によって作られた手炉は、彫刻、彫刻、彫金、象嵌、研削などを施し、詩、書道、絵画、篆刻を統合した工芸品であり、実用的な道具でありながらも、工房の文化鑑賞物でもある学術的なスタイルに満ちており、高い歴史性、文化的意味合いとコレクション価値を持っているそうです。



おまけのトリビア !古代中国では、電気が無いのにどうやって温かく過ごしていたの?

その1.とにかく厚着!紙でできた衣(紙衣)を中に着込むのも裏ワザとしてあったとか。
その2. 手炉を使う。意中の人にさりげなく渡して「あなたを気にかけていますよ」というアピールにも有効。
その3.湯婆子→現代の湯たんぽのようなもの。これで足を温めて寝る。
その4.火鉢。室内でも屋外でも、移動可能で暖がとれる優れもの!
その5.「土炕」「火炕」といった中国式のオンドルがあった。なんと、7200年前からこうした暖房機能がすでに使用されていたとか!


「純真ロマンス~最強の花嫁~」
「想いの温度差」キービジュアル
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2024年2月9日(金)DVD-BOX2 リリース 各19,800円(税込)
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原題:九霄寒夜暖
発売・販売元:エスピーオー
©BEIJING IQIYI SCIENCE & TECHNOLOGY CO., LTD.
https://www.cinemart.co.jp/dc/c/ondosa.html

連載「中国時代劇トリビア」記事一覧

この連載では、中国時代劇を見て感じるちょっとした不思議や疑問を解説します。

Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「中国エンタメニュース」を連載中。『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)『見るべき中国時代劇ドラマ』(ぴあ株式会社)『中国ドラマ・時代劇・スターがよくわかる』(コスミック出版)などにも執筆しています。

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