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古代中国の法律専門家?! 「訟師」とはどんな仕事?|中国時代劇トリビア #118

この連載では、中国時代劇を見て感じるちょっとした不思議や疑問を解説します。第118回の今回は、法律を学ぶのが大好きで訟師(現代でいう弁護士)を目指す、賢く正義感溢れるヒロイン・春荼蘼が活躍するドラマ「春うらら金科玉条」より、「訟師」について探っていきます!
「中国時代劇トリビア」バックナンバー

「春うらら金科玉条」ジュアン・ダーフェイ1
「春うらら金科玉条」© Jaywalk Starlight(ChongQing)Film & Media Co.,Ltd



「訟師」は、現代でいう「弁護士」?

現代で弁護士というと、法律の専門家として、社会の中で起こるさまざまなトラブルを解決したり、人々の自由、財産、権利を守るとともに、不正が行われることのないように、社会を見守る役割を果たす職業と知られていると思います。しかし、古代中国では、現代とは少し立場が違ったようです。

研究者の方の論文などによると、古代中国の法律を専門とする人には「代書」「幕友」「訟師」がいたそう。以下その3つの役割を紹介します。

「春うらら金科玉条」場面写真1
「春うらら金科玉条」© Jaywalk Starlight(ChongQing)Film & Media Co.,Ltd

代書とは

官が認めた訴訟文書代筆の職業。各地の裁判所がその管轄外の中で、誠実で読み書きのできる者を選んで試験を受けさせ、合格した者に代書の資格を与えた。署名した訴状の内容には責任が伴い、不正行為が発覚した場合には厳しく処分される。後に地方によって能力のばらつ付きが出たり、賄賂の横行などの問題もあった。

幕友とは

文官の地方官が任地で私設する秘書組織。主な業務内容は、会計・徴税・裁判・文書作成といった事務作業であり、法務専門は「刑名老爺」、財務専門は「銭穀老爺」とも言われた。科挙受験生の知識人層が稼ぐために務める場合が多かった。

訟師とは

民間の訴訟の手助け(助言を与える等も含む)、訴状の代筆などをする(資格試験などは受けていないので無資格となる)。また紛争調停人なども請け負う。法律上その活動内容に関しては厳しく制限されている。利益のために入れ知恵をする、紛争を挑発するなどの悪い輩の出現もあり、あまり世間的な評判の良くない職だとも。

訟師はどんな存在だった?

古代中国には公認の弁護士制度は存在せず,そのなかでも訟師は、官憲の禁制の目を逃れて行動する陰の存在であったため、その出現と存在には、経済的、政治的、法制度、文化的その他の深いルーツがあり、現在の弁護士とはかなりの違いがあるそうです。

また、訟師のほとんどは、出世から外れた学者、役人、特定の社会的つながりを持つ幹部、政府役人や氏族の子弟、そして権力のある豪民の出身でした。さまざまな時代において、社会経済的、または政治的側面の違いにより、訟師の活動には明らかな地域的特徴が見られた、とも説明されています。 

「春うらら金科玉条」場面写真2
「春うらら金科玉条」© Jaywalk Starlight(ChongQing)Film & Media Co.,Ltd

女性が訟師を目指すことは…

「春うらら金科玉条」の中で、周囲の大人たちが春荼蘼が訟師になることを反対するのは、訟師が胡散臭い印象を抱かせる職業であったことと、そして家父長制が当たり前だったこの時代に、女性が人前で顔を出し、自分の考えを発言する行為は、名誉を貶める行為なので、評判が悪くなり後に嫁の貰い手がもなくなってしまうからため、という風にも考えられるのかもしれません。

実際に「周礼」の記録には、一定級の公務員またはその妻が訴訟当事者となった場合は、対面を保つために、その部下または親族に訴訟の代理を務めさせる権利を有したとされているそう。

そうした時代背景の中でも、逆境や差別にめげず、自分の夢をかなえようと奮闘する春荼蘼は、とってもカッコいいヒロインですよね!春荼蘼役を演じるジュアン・ダーフェイが、“25秒で140字”という圧倒的なセリフを披露するアツい訴訟シーンお見逃しなく!

「春うらら金科玉条」ジュアン・ダーフェイ2
「春うらら金科玉条」© Jaywalk Starlight(ChongQing)Film & Media Co.,Ltd


「春うらら金科玉条」予告編



訟師が登場する中国ドラマ「春うらら金科玉条」
「想いの温度差」キービジュアル
2024年1月26日(金)DVD-BOX1 リリース
2024年2月9日(金)DVD-BOX2 リリース 各19,800円(税込)
※DVDレンタル&動画配信中

原題:九霄寒夜暖
発売・販売元:エスピーオー
©BEIJING IQIYI SCIENCE & TECHNOLOGY CO., LTD.
https://www.cinemart.co.jp/dc/c/ondosa.html>

Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「中国エンタメニュース」を連載中。『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)『見るべき中国時代劇ドラマ』(ぴあ株式会社)『中国ドラマ・時代劇・スターがよくわかる』(コスミック出版)などにも執筆しています。

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